沖縄時代。緊急帝王切開を拒否された経験から学んだこと。

今回の旅で、

10年前に沖縄のU総合病院で働いていた時にとても親しくしていた同僚の助産師2人に会えました。

ひとりは首里の方ですが、

もうひとりは九州から。

日程が偶然に私の日程と重なっていて!

さて、

助産師たましいというのはすごいものです。

10年経った今も、

関わった妊産婦さんたちのことを去年のことのようによく覚えていて

私も思い出話が存分にできることがありがたいことだと思いました。

おそらく私が一生忘れられないだろうある妊婦さんを担当した経験をお話しします。

愉快な仲間を仕事を楽しくします。あの時は楽しい大人の合宿みたいな暮らしでした。

この方、やよいさん(仮名)を通じて

私はとても大切なことを知りました。

一つは、

妊娠した女性がお母さんになる(成長する)にはそれぞれのタイミングがあること。

もう一つは、

帝王切開でのお産をする女性はすごい!ということ。

 

やよいさんは、

私が産休代理で任務に就いたときに引き継いだ25歳の妊婦さんです。

分娩予定日3週間ほど前から妊婦健診に来なくなり、

予定日1週間以上すぎてから来院したとき、

「おばあおすすめのヤギ汁を食べたりして、自然にお産が始丸のを待っていたけど生まれません。。」

と行って来ました。

様子を見ても陣痛が始まらないので、

後日入院してもらって分娩誘発を試みることにしました。

でも、なかなか陣痛が始まらず、

入院して2日目胎児の心拍に異常が見られて、

医学的にはそのまま様子を見るわけにいかない、

緊急帝王切開が必要だという状態。

私は、やよいさんに状況と方針を説明し、

手術室に連絡するなど帝王切開の準備を整えていました。

しかし、

やよいさんは手術を拒否しました。

赤ちゃんを助けるために帝王切開を受ける、

ということが受け入れられなかったようです。

私はとても困惑しました。

未だかつて緊急性を理解した上での帝王切開拒否はなかったから。

薦めたら「はいお願いします」と妊婦さんから言われるのが普通でした。

でも同意書に本人のサインがなくては手術ができません。

結局、

助け舟があり、同意を得て手術にこぎつけました。

手術室に入って、再び

「先生、本当にやらなければいけない?」と聞かれました。

私は、内心の困惑を抑えて

「とにかく頑張ろう、私も頑張るから」

と言うしかありませんでした。

術後、

私自身の感情の整理ができるまでに2~3日かかりました。

その間、私はやよいさんと接する気持ちになれません。

沖縄の言葉でいうと「わじわじする〜」という感じです。笑

少し遠巻きに見ていました。

すると、術後2日目にすっかり元気になったやよいさんが

赤ちゃんと可愛がってニコニコして廊下を歩いているのに出くわしました。

「どうね~?」と声をかけると、

「おっぱいもいっぱい出るし、元気です!」

とやよいさんが答えました。

内心、ほっとしました。

悪魔じゃない。。素敵なお母さんになってる。

それから、

術後1~2ヶ月まで外来で関わりました。

ある時、エレベータホールの前で

やよいさんが私に話してくれました。

「先生、この子生んでほんと、よかった~。

この子を授かった時、自信なくて堕ろそうかと思ったんよね。」

と。

私は、心の中で涙が流れました。安堵の気持ちと深い理解が私の心を揺さぶっていました。

そして、

「そっか。。そうなんだ。。それはよかったねぇ。

先生も嬉しいよ。」とだけ答えました。。

この方を通じて学んだことは本当に奥深いです。

それは、帝王切開を受ける女性は、

それが当たり前のようにとらえらてしかも残念なことと思われる節がありますが、

実は本当にそれを行える人は、大きな大きな母としての愛の行為として

我が身を切り裂かれることに同意しているのだということ。

(余談ですが、私自身が緊急帝王切開になって、

手術台に乗ってお腹が開いても抵抗し続けるという夢を見たことがあります。苦笑)

それから、

母になるタイミングは人それぞれだ。

ということ。

妊娠して出産するタイミングまで母になりきれなかったやよいさんですが、

それでも術後に素晴らしい母性愛が開かれて行ったように。

沖縄でやよいさんの担当医になったことは、

私の人生を深く強くしてくれました。

一生忘れられない患者さんです。

もちろん、同僚たちも良く覚えていたようです。

沖縄はたましいの再会の地。

お読みいただきありがとうございます。

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