【お産蜜月 第十五話】君が私を通ったときの話。(後編)

愛しい君、お産よ。

君が私を通った時の話の続きをしよう。

前編はこちら。

その夜のM病院は忙しい夜だった。

他に4人くらいのお産が同時進行していたらしい。

 

その夜の私の担当助産師が訪床したのは

おそらく最低限になったはずだ。

分娩施設には、

そういうお産が集中する夜があるものだ。

 

そして夜が深まり

 

結構いい感じの陣痛の具合になってきた。

お産が始まって初めての内診を助産師がしてくれて、

子宮口はほぼ全開してることがわかった。

 

赤ちゃんが出てくるにはここからもうしばらくかかり、

近くのカプセルホテルに待機していた子どもの父親は

この時点で呼び出された。

 

私は、分娩室の隣の待機室にあるベッドに移った。

私の分娩を担当する助産師Aは、昨夜の人ではなかった。

もう勤務交代していたのだ。

 

M病院は、特にフリースタイルのお産をやっている施設ではなかったが

可能な限り私のニーズに応えようとしてくれていた。

 

しかし、助産師Aはフリースタイル分娩の介助をする経験が

ほとんどなかったいう。

 

今は、ほとんどの産科医療者が

野性にかえるようなフリースタイルのお産は知らないが、

私は沖縄のU病院で経験して、

そのよさや流れを自分なりに知っていた。

産婦になった私は、

自分のからだをどういう向きにしたいのか、

どういう力加減でいたいのか。。

自分の野性の力動に沿っているだけであった。

お産ラッシュが幸いして?分娩台に空きがなく、

誰も私を分娩台に乗せたいと言い出す者もなかった。

 

むしろ周りで介助している別のスタッフが

「どうしたいですか?音楽とか、何か希望ありますか?」

と聞いてくれたので、

「音楽は入りません。灯りも消してください。」

と頼んだ。

 

照明は消され、

部屋は明け方の白んだ自然光で薄く照らされるだけになった。

煌々と明かりのついた中でお産する野性動物などいない。

音も、自然の音だけがいい。

 

分娩室でよくかかるタイプの(忌まわしい)オルゴール音はなく、

分娩管理に必要なモニター音と、

私の漏らす吐息交じりの声だけになった。

 

私は動物のように四つ這いになり、

子どもの父親につかまるようにして、いきみはじめた。

 

気がついたら、S院長がそこにいて、こう私に声をかけた。

「何が出てもいいというくらいいきんでごらんなさい。」

どれくらいいきんだら丁度いいのか、

加減を思って少し躊躇していたが、

私は遠慮しなくていいことがわかって、以後安心して力めた。

 

S院長は、介助の助産師Aにも

この姿勢での分娩の介助法を指導しているのが聞こえた。

私は、お産の最中ながらも、

S先生さすがだな。

と、意識のどこかで冷静に感心していた。

 

そして、つるりと娘が誕生した。

か細い声で少し泣いた。胎盤は普通、へその緒は短め細め。

2980gだった。

 

娘の父親には性別を伝えていなかったが

男の子だと思っていたようで、非常に驚いてくれていた。

 

(余談であるが、私は生まれてくるまで性別を知りたくなかった。

そうとは知らずわざわざ知らせてくれた医師がいて、

ショックで大泣きをしたことがある。

それで当時の夫が「自分は最後まで知らないでいて、代わりに驚いてあげるよ。」

と言ってくくれ、それは大きな慰めになった。)

 

私自身の体も出血も大してなく、

会陰裂傷もほぼなく、

大安産であった。

 

事務長が部屋に見舞いに来て、

「S院長が事務室に来て、桜先生は理想的なお産をしたよ。

と満足げに話をしていた」と後から教えてくれた。

本来お産は、産む女性が全生命力を発揮する

命の営みである。

にもかかわらず、現代では主体的なお産を

産科医療者も見る機会がほぼないのだ。

 

女性が本来の産む力にアクセスできないまま

お産が終わってしまうことがほとんどなのだ。

 

介助した助産師Aは、私のお産を担当して

感動で胸が打ち震えて泣いたという。

 

お産は、野生で神聖でありえる。

 

それを知っていても、

そういうお産をする人になかなか出会えない。

むしろ、恐怖と緊張の中のサバイバルに終始する

ということを多く経験する。

 

医療者は産婦に依存されるし、

医療サービスに依存させることがもはやwin-win、

というのが今の現状といったところだ。

 

経験したことで判断するしかなく

お産とはそういうものだとしか知り得ない。。

 

豊かな経験と手技が

次世代へと伝承されることなく途絶えてゆくだけなのは

この産科領域でも起こっていて、本当にもったいないことだ。

 

母が生まれた時代には9割以上が家で生まれた。

私の第一希望は自宅出産だったし

サポートされるならばそうしたかったが、

私は与えられた状況の中で選択し、

最高の結果を得られて満足している。

38才。いわゆる高齢初産。

安産の秘訣のふりかえりをする。

 

セックスに向いていることにも通じる

自分の生まれ持った体質もあると思うが、

 

妊娠中も体をよく動かして、むしろ鍛えていたこと。

 

野生に身を委ねることに慣れていること。

 

そして、

自然分娩じゃないといやだ。という最後のこだわりを手放して

いのちの全体性を信頼し、身を委ねよう。

と、マインドの束縛から自分を解放したこと。

 

あとは、

誰がどんな在り方でそこに

いてもらえるのか。

 

これも大きいと思う。

周りにいる人が

産む女性が生命力を開いてゆけるサポーティブな姿勢で

寄り添うこと、

赤ちゃんが生まれる力を最大限信じること。

 

そして、

適切に見極められた手助けが得られること。

 

お産の翌日に、母が来院。

私を見て、目を細めるようにしてこういった。

「ああ、花が開いたようだね。

そういえばね、、。

お母さんも、あんたのおばあちゃんにそう言われたんだったね。」

と。

沖縄時代に私が担当した女性のバースプランで

「花が咲くようなお産をしたい。」

と書いた人がいたが、

その時の私は、まだ知らない世界観だった。

 

女性性開花という言葉は手垢がついたみたいで嫌だけど、

 

実際に「女が女になる時の花」は開くのだ。

 

めくるめく性交流でもそれはあるし、

豊かなお産でもある。

 

痛くて辛いのがお産。

という話がちまたには出回っているが、

本来は全然そうじゃない。

生命エネルギーが華々しく全開大になるとき、

チャクラの花が咲き誇っている。

その女を見る者やそばにいる者を陶酔させ感動させるし

本人もいのちを全うしているという

他の何にも代えがたいいのちの満足を味わう。。

 

そんな豊かなお産があることを

多くの人に認識してもらいたいし、

できるだけ多くの人に経験してもらいたい。

 

花が開いた女性が発する

その力強い生命場に受け容れられる子どもや男たちは、

その豊かさのうちにたっぷりと安らいでほしい。

 

こういう世界を言語化するのはむつかしいと思うが、

君が通るとき女は花開くのだ。

 

エネルギー場を感じる心の目で愛でる花だ。

 

ぜひそのすばらしい機会を

あなたにも探ってみてもらいたい。

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