【お産蜜月 第七話】女子当直室で。

愛しい君、お産よ。

 

私を産婦人科医に育ててくれたAは

大学病院だったので、そこの利用者は、

なんというか

「重たい」人が多かった。

 

だからこそ

若手の教育の場になるわけだが、

 

君が降りてこようというときにも

あちらでは婦人科がんの患者が死を目前にしており、

表には救急車が来て母体救急が運び込まれ

緊急手術対応で輸血用の血液をオーダーし

ストレッチャーを押して院内を走る。

 

こんなことが

昼夜を問わず日常的に起こる可能性があるので

いつ何が起こるかわからない緊張感、

初心者には気をぬくのがとっても難しかった。

 

頭わりでふりわけられる当直、

住民検診や関連施設の産婦人科へのアルバイト出動要請も、

若手の医局員で対応する慣習になっていた。

 

私は浪花節からのストレンジャーでもあり、

上司や同僚との関わり方の文化も違ったのも

今思えば過酷だったと思う。。

 

それに、どんなに経験しても

君については解せないことばかりだった。。

 

繰り返しになるけど

君の取り扱いにはずっと違和感だらけだった。

 

そしてあるとき、私は気づいた。

自分自身に対する圧倒的な違和感を。

 

当直室で体を休めていたときだったか。。

 

自分の日常について

ふと客観的になる瞬間があったのだ。

 

そこに見える私は、分娩室にいて、

小さき人が生まれても

なんの感動も感じていなかった。

 

仕事が終わった。

と思うだけの私が見えた。

 

君といても、

君の本当のところを感じられなかったのだ。

 

疲れてきっているから。

といえばそれまでだが、

 

これは、何かがとてもずれているサインだ。

とても重大な何かが。

 

触れたいのにその周りをぐるぐると回るだけで

核心に触れることが叶わず虚しい。

 

私のたましいはとても切迫していた。

 

そんなとき、思いがけず出会った1冊の本が

私を暗闇から救い出してくれた。

 

それは、

「分娩台よ、さようなら」

というタイトルだった。

 

女性医師用当直室の本棚に置いてあるのが

唐突に目に入ってきた。

 

手に取り、疲れ切った頭でパラパラとページをめくった。

 

そして私はすぐに夢中になり

自宅アパートに帰ってからも布団の中で読み込んだ。。

 

その本には、

あえて分娩台を持たずに産科診療所を開設した

産科医である著者の

経験と医学的な視点が

丁寧に書き連ねられていた。

 

ようやく生きた心地がした。

 

何に携わっているのかがわからない。

私がおかしいのか?と思っていたが

その逆だ。

 

その本を読んで、私の持っていた違和感が

私だけのものではないことが初めてわかった。

 

それにしても、

本の力というのはすごいよね。

人生を全く変えてしまう力がある。

 

本のように、

ごくさりげない形でこの世にありつつも

たまたま手にとってくれた人の人生を

圧倒的にすくい上げるような

そんな気の利いた助け船を出せる人間に

私もなりたい、って思うよ。

追伸:東京でも大寒桜が満開になっているよ。ソメイヨシノはこれからだ。

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